雲一族と泥ガール3巻

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七海社長と瑠璃の確執など、七海家の問題に首を突っ込むすずめ。
その一方で陸島の兄弟たちと溝が出来てしまいます。

家族として必要とされていない不安に押しつぶされそうなすずめに、玻璃が「私と結婚すれば?」と言ってきて・・・!?

ここからは最終巻のネタバレです!

11話|ヘリテージ

一緒に作ったご飯を食べるすずめと玻璃。

(私たちはまだ家族じゃない)
(だけど今この瞬間、玻璃さんとわたしは限りなく家族してると思う)

「ところでこの部屋は金一郎おじ様の名義?」

金一郎の名義だがもう解約しなくちゃとすずめは言います。

すると玻璃が残しておいた方が何かと便利だと言い、借りてくれることになります。

「ありがとう玻璃さん!思い出を残してくれて。」

すると玻璃も料理を教えてくれたことのお礼を言います。

「思い出を教えてくれてありがとう。」

タカとどうやって仲直りするのか正直なにも答えが出ていないすずめですが、だからこそまずは七海家のことを知りたいと思っていました。

そして父・金一郎の過去も。

そんなすずめに玻璃は言います。

「ひとつだけ忘れないで。瑠璃姉さんの駒には絶対ならないってこと。」

「大丈夫、あなたのことは私が守るから。」

すずめは嬉しくて玻璃に後ろから抱きつきます。

「しっかりしなきゃ」、「みんなを守らなきゃ」と思ってきたすずめが、ずっと欲しかった言葉でした。

その時、バラを持ったかもめと庭師のおじいちゃんが家にやってきます。

近所の植木屋にいたところ、迷子のかもめを見つけ一緒に来たようです。

「お母さんのバラ、僕が選んできたよ!」

お金を払うと言うすずめですが、庭師さんはかもめが選んだヘリテージをすずめが面倒を見て、妹が肥料をやって、弟が剪定して、そうやってみんなで育てたバラがまた七海の庭で綺麗に咲いてくれたら充分だと言います。

昔、玻璃たちもあの庭で育てていました。

ヘリテージは母が大好きだったバラでした。

しかし父が瑠璃に黙って全部伐採してしまってそれっきり・・・。

かもめはハッと思い出し、引き出しの中から妖怪大辞典を取り出します。

「瑠璃さんが大変なの!たぶん妖怪に憑りつかれてるんだ!助けてあげて!」

瑠璃は業務中に電話を無視し、すずめに料理を習っていた玻璃に大激怒していました。

すずめは我慢できず爆笑してしまいます。

「ごめんなさい、だってかもめの言うとおりだなって・・・。」

すずめは悩んでいるのがバカバカしくなったのです。

「瑠璃さん、これヘリテージです。ここの庭でも育ててたって聞きました。」

「みんなで育てませんか?」

瑠璃はすずめに思い切りビンタをし金一郎がなぜこの家を出たのかを話します。

「祖父の代で傾いた経営を立て直す苦しい日々よりも、素性の分からない子供を引き取って楽しい家族ごっこに逃げたのよ。」

残された弟は兄の責任を背負うことになり、おかげで弟と家族は崩壊。

すると「何も知らないのはそっちだ」と凪が話に割り込んできます。

「二度とすずめちゃんに手を出すなよ。オレは全財産かけてでもその子のこと守るからな!」

12話|思い出という名の鎖

意味深な凪の言葉にすずめは父の過去を詳しく聞こうとするのですが、凪は教えてくれませんでした。

「誰にも言わないって金一郎と約束してんだ。」

一方、瑠璃は玻璃に、凪を徹底的に調べるよう命令します。

あの凪が「何かを隠してる」という事実を隠せないなんて、調べてくれと言ってるようなものだからです。

その後、玻璃の作った料理を珊瑚も一緒に食べることに。

「玻璃すごい!この味、玻璃が再現するなんて。私も作りたい。」

すずめは皆に作り方を教えてあげることに。

そしたら皆で母の思い出を残せるから。

「私も残すことが一番大事だと思ってた。」

「思い出を残すことが瑠璃姉さんのためになるって。今日までずっとそう信じてきた。だけど間違ってた。」

玻璃は一人で凪の元へ行き、数日後に大きな調査を入れることを告げます。

凪はみずから役員に入る程七海に協力的で、良くも悪くも重要人物なので、失墜されると困るのです。

「遠慮なく調べていい。だけど調査結果はまず玻璃くんに見て欲しい。」

「見てどうするかも玻璃くんが”自分”で判断して。」

13話|それぞれの道

すずめはめじろとタカのことが気になっていました。

めじろはお金持ちでイケメンの彼と政略結婚させられそうになっており、タカは様々なことを学ぶために教育を受けさせられているからです。

しかし結果的に本人たちは嬉しそうなので、すずめは何も言えませんでした。

悩むすずめは、凪に相談にのってもらおうと一人で会いに行きます。

すると凪が真剣な顔つきで「話を聞いてくれる?」と言ってきて・・・?

14話|約束

「君のお父さんの話なんだけど。」

「すずめちゃんは本当の親のこと気にしたことある?」

気にしたことはあるすずめですが、今はもう知りたくないと思っていました。

「会ったこともない”本当”の親とかどうでもいいし、血の繋がりより私を家族だって思ってくれる人の方が本物だもん。」

凪の話とは、金一郎の過去の話でした。

「前にも言ったけど、金一郎くんは何も悪くない。」

「全部捨てる必要なんてなかったんだ。」

当時、金一郎は本店の副総支配人を任されていました。

その頃の七海ホテルは二代目社長、彼らの父親の代で経営が傾き崖っぷち。

ライバル社の北斗グループとの資本業務提携での生き残りが検討されていました。

北斗の案を受けることは事実上の買収ですが、雇用は保証してもらえるので、二代目をはじめ役員たちも賛成へ傾いていました。

ただ一人、七海銀二郎を除いては。

銀二郎は海嶺不動産との提携案なら生き残れると、諦めませんでした。

その頃、金一郎は海嶺不動産の常務の娘である陸島洋子と交際中。

銀二郎は彼女は使わない手はないと考えていました。

「洋子を経営の駒にするのだけはごめんだ。今は北斗に頼み、体制を立て直してから再建の方向性を一緒に考えよう」という金一郎の意見には反対でした。

その後、金一郎は体調を崩し入退院を繰り返し、銀二郎とは会わない日々が続きます。

金一郎の身の周りの世話は洋子の妹・游子がしてくれていました。

「金一郎さん、わたしにしませんか?私はあなたを裏切ったりしないから。」

金一郎が療養中、洋子は銀二郎のものになっていました。

2人の間に何があったのか金一郎は何も知りません。

ほどなくして2人は結婚し、長女・瑠璃が生まれます。

金一郎は家に帰らず飲み歩くようになり、楽しそうな彼が七海ホテルの社長の息子だとは誰も気づきませんでした。

もちろん凪も。

2人の出会いは最悪でした。

凪は金一郎のことをきれいごとだけで世の中渡っていけると信じてる世間知らずの甘い奴だと思っていました。

だからすずめを引き取ると言い出した時、当然大反対しました。

しかし「この子のおかげで過去と決別する決心がついた」、「これからはこの子のために生きることにする」と金一郎は言ったのです。

家を出た金一郎を游子が追いかけ、そしてすずめの母となったのです。

「すずめのおかげで家族を増やそうと思ったんだよ」と言った父の言葉、「すずめがいてくれたからお父さんと家族になれたの」と言った母の言葉を思い出し涙を流すすずめ。

「凪くん、私やっぱり知りたい。お父さんはどうして私を引き取ってくれたの・・・?」

15話|あふれる思い

「誰にも言わないってお父さんと約束したこと、ここまで話したんなら全部教えて!」

その時、凪の携帯に玻璃から連絡があります。

凪は玻璃の元へ行き、結局教えてもらうことはできませんでした。

心の整理がつかず、ボーっと歩いていると、気付けば前の家に戻っていたすずめ。

家にはめじろとタカが2人で味噌汁とおにぎりを作っていました。

てんやわんやな2人を見て思わず大爆笑のすずめ。

すずめに謝りたかったタカが言い出したことでした。

「オレもっと大人になるよ。すずめ姉ちゃんに頼るばっかりじゃなくて、これからは頼ってもらえるように頑張る。」

ようやく仲直りができたすずめとタカ。

(血の繋がりとか守るものとかそんなもの全部どうでもいいことだった)
(家族って帰る場所なんだ)

その頃、凪の身元を調査した玻璃は驚きを隠せませんでした。

凪はすずめの父親だったからです。

凪はバレてもいいと思っていました。

陸島夫婦にもしものことがあれば、凪が子供たち全員引き取ると勝手に決めていたし、その時までに金一郎が捨てた財産(七海ホテル)を回収しようと思っていたからです。

そう全ては会社を乗っ取るためです。

しかし七海社長が引き取るなんて大誤算でした。

「さあ君はどう動く?玻璃くん。オレをどうする?」

「誰に何をどう話す?”七海”のために。」

色々と考えた結果、玻璃は家を出ることを決意します。

16話|つらぬかれた愛

玻璃から家を出ることを告げられたすずめは、つい「離れたくない」と口走ってしまいます。

2人の様子を見ていた瑠璃は黙っていません。

「私から逃げたいなら私を殺しなさい、玻璃。あなたが私の時を止めた。」

「せめて私をお母様の元へ送りなさい。」

揉めていると庭師のおじいちゃんが話に入ってきます。

場違い感半端ないと感じるすずめですが、実は庭師さんは七海会長だったのです。

「洋子さんは銀二郎が無理やり金一郎から奪った。事実は逆だぞ。」

あの頃、銀二郎が出した海嶺との業務提携は海嶺側からの条件が厳しく到底飲めたものではありませんでした。

そんな折、洋子は銀二郎に自分と結婚するなら海嶺側の条件を下げると言ってきたのです。

洋子は金一郎とお見合いしたものの、本当は銀二郎が好きだったのです。

銀二郎は周りに嘘をつくことで全ての罪を被っていたのでした。

経営のため、そして捨てられた金一郎の為、なにより金一郎を愛せなかった洋子のために。

なぜなら銀二郎も洋子のことが好きだったから。

2人は両想いを叶えるために「経営のため」という嘘を使ってしまったのでした。

結局、実の子供まで騙して、会長の前ですら七海社長を演じています。

七海銀二朗はそんな男なのです。

最終話|家族の接ぎ木

すずめは諦めずに瑠璃を朝食に誘います。

しかしそう簡単に変わらず、瑠璃は「お父様も連れて来られたら」と無理難題を言ってきます。

何度も電話しているものの七海社長は一度も電話に出てくれませんでした。

それから2週間。

変わったことと言えば、玻璃が髪をばっさりと切ったこと。

でもって食卓にレギュラー入り。

すずめは髪型が変わって別人のような玻璃を意識するあまり避けていました。

無自覚ではありますが、玻璃のことを好きになっているのです。

玻璃はライバル企業の北斗へ勉強に行くことに。

凪は自分のことは信じなくていいから、どうかすずめのことだけは、と玻璃に頭を下げていました。

「あの子、まだ無自覚ですが多分私に恋してます。」

「私に頼むのは正解かもしれないですね。」

すずめは凪に自分の本当の親のことを聞きますが、家族は血の繋がりだと思っているのではなく、血の繋がりも過去も関係なく、育ててくれた親も、産んでくれた親も、引き取ってくれた親も、みんな自分の家族だと思っていました。

「うまく接げば誰とだって家族になれる。それから顔も知らない本当の親とだって今度は私がうまく接げばまたくっつくかも知れないよね!」

そのことが最近ようやく分かってきたのです。

家族について話すすずめの言葉を隣で聞いていた凪の目には涙が。

玻璃とすずめ2人で家に帰ると、たんなる鉢合わせですが、リビングには瑠璃と銀二朗がいました。

かもめは「仲直りアイテムなんだよ」とおにぎりを銀二朗に差し出します。

するとあの銀二朗がおにぎりを手に取り口にしたのです。

瑠璃もおにぎりに手を伸ばそうとした時、銀二郎が「梅は苦手だったろうう。こっちから取りなさい。」と鮭を勧めたのです。

皆で仲良くおにぎりをいただくのでした。

(お父さん、もうすぐ新しい花が咲くよ)

完結

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