”ジョエルを助けて”
その声を聞いたチセはルツとともに家を飛び出した。

魔法で家のカギを開けてジョエルの元へと駆け寄ると、意識が無く昏睡状態だった。
男に取りついているのは「リャナン・シ―」吸血鬼の妖精でほんらいは人を喰って生きている。

離れないと・・・リャナン・シ―は愛した男を食べ続ける代わりに才能をあげる妖精だ。
チセはエリアスにジュエルを任せてリャナン・シ―を外へと連れ出した。

「私は愛してなんかいない」泣きながらチセに訴えかけるリャナン・シ―
一度人を愛してしまったらそれを貫きとおさなければいけない。

ジョエルに死んでほしくないリャナン・シ―必死にそう自分に言い気きかせるのだった。
丁度そのころ、ジョエルが目を覚ました。

「アナタはもう長くは無いでしょう。」エリアスは正直にジョエルにそう伝えた。
”あと一週間・・・”それがジョエルにこのされた余命だった。

チセは二人をもう一度合わせて言葉を交わせるように妖精の塗り薬を作ることにする。
それをまず他に塗ればただの人間にもリャナン・シ―の姿見えるようになる。

しかしその薬を作ったのを妖精に知られればどんな怒りを買うかわからなかった。
妖精は基本的に人間に見られる事を嫌う・・・

しかし、エリアスは今回の事情とチセの想いに心動かされ許可してくれた。

妖精の塗り薬を作るには5日間かかる。
しかも今回は妖精の力を借りられないため薬瓶に張り付いて魔力の調整を行う必要があった。

1日目・2日目 チセは明らかに衰弱していった。
ろくに眠ることも出来ないのだから当然だが何とか5日目まで魔力をコントロールし無事薬を作ることんに成功するのだった。

ジョエルが大切にしていた薔薇が咲き誇る庭・・・
そこに”ヒョコ”っと顔を出したのはリャナン・シ―

二人は今までの思いをぶつけ合う。
「僕を愛してくれてありがとう」ジョエルは本でリャナン・シ―の事を知り
自分の寿命が尽きようとしているにもかかわらずそう言った。

そして自分が初めてリャナン・シ―と合った時とても綺麗でもう一度会いたいと思ったとも伝える。
「ぼくは妻の元に行くかもしれないがきっと君の元にも行く待っている人がいるからちっとも怖くなんてない」

-だからこの命は君が貰ってくれ-

そう言うとジョエルは灰になって消えてしまうのだった。
リャナン・シ―はチセに礼を言い今後はジョエルが育てた薔薇畑で過ごすと言っていた。

チセに目にも自然と涙があふれた・・・
丁度その時、妖精の王がチセの前に現れれる。

どうやら妖精の薬を作ったのがばれたらしく残りの薬を回収しに来たようだ。
その時”ゲホゲホゲホ”と急に咳き込み吐血する。

気御失ったのかチセはそのまま倒れ込んだ、慌てて駆け寄るエリアス
妖精の王に促され時間の流れがゆっくりな妖精の国へと行くことにする。

シルキーに少し留守にするから家を頼むそういって急いで妖精の国へと向かった。
国に付くとチセの体調は徐々に良くなり直ぐにキズはふさがった。

指輪で押さえていた魔力が今回無理をしたために溢れてしまったようだ。
あとは完治するまで魔法を使わないようにということで二人は元の世界へと戻って行った。

二つの世界をつなぐ洞窟を抜けると外は雪景色!妖精の国と時間の流れが違う為こっちではすでに数カ月も過ぎていたのだった・・・

-二人が妖精の国に行ってから-

留守を頼まれたシルキー
家の掃除をし来客の対応、そしてまた掃除・・・
二人が出かけてもうずいぶんになる。

ふと昔の自分を思い出す。

満月の夜、壊れた家の前で佇むバンシー(無き女)、たまたま通りかかったリャナン・シ―が声を掛ける。
元々使えていた家族が絶たれたようで家はすでにボロボロ、どれだけ泣いても叫んでも助けてくれる人は居なかった。

途方に暮れていたバンシーだったがリャナン・シ―にどっかに行ったら?と言われとぼとぼと歩きだすのだった。
その時、防人の妖精に出会う。

途方に暮れるバンシーだったがある一件の家に連れて行くのだった。

”お前を照らす明かりが無いのであれば今度はお前が明かりを選べばよい”

そう言うとバンシーはみるみる美しい姿へと変貌を遂げそれはまるで銀の花のようだった。

役目を終えた防人は「ではな、バンシー・・・いやシルキー」と行って去って行った。

”ガチャ!チリンチリン!”久しぶりに家の扉が開く。
シルキーは帰ってきたチセとエリアスに飛び付き、幸せを噛みしめるのだった。