パーフェクトワールド40話

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自分の気持ちに正直になり再び結ばれた樹とつぐみ。
しかしつぐみの父は樹との交際を認めてくれません。

樹は2人の交際を認めてもらうため、つぐみの父に会いに行くのですが・・・!?

40話|春の嵐

「お父さんが反対するお気持ちは分かります。」

「でも僕という人間をどうか知ってもらえませんか?」

樹はつぐみの父と向き合おうとするのですが、父は聞く耳を持ってくれません。

「話すことはなにもない!!」

そう言って樹を追い返そうとします。

その時、つぐみと母親が病室に入ってきました。

樹がいることに驚くつぐみ。

樹は「今日は挨拶だけで」「また来ます」と言い病室をあとにします。

樹は勝手な行動をとったことをつぐみに謝ります。

だけどつぐみに言えば反対されると思ったのです。

「俺はやっぱりこのままにしておくわけにはいかないと思うんだ。」

「私があの時あんなふうに泣いたせいだね・・・。」

つぐみも父の失礼な態度を樹に謝ります。

(本当は私が間に入らなきゃいけないのに)
(最近父とは一切口をきいていない・・・)

樹は最初から話を聞いてもらえるなんて思っていませんでした。

「何度でも顔を出すよ。分かってもらえるまで。」

それから樹はつぐみの父の病院に毎週末来るようになります。

しかし何度来ても父が口をきくことはありませんでした。

ただ同じ時が流れるだけ。

樹にも疲れが見え始めていました。

「ねぇもう無理しないで。こんなこと続けてたら気持ちも身体ももたないよ。」

「私はもう覚悟はできてるから。鮎川が一番大事なの。」

つぐみはそう言いますが、鮎川は納得できませんでした。

「川奈のお父さんは立派な人だと思う。娘に憎まれるのも承知で一番幸せを願ってるんだと思う。」

だからこそ樹は諦めたくありませんでした。

父に想いを分かってもらって堂々と付き合っていきたいのです。

つぐみは満開に咲いている桜の木を見上げます。

「弘法山のさくら萬寿キレイだろうなあ。」

この時期、弘法山が桜で満開になると丸くてピンク色でお饅頭みたいに見えて、小さい頃いつもそう呼んでいました。

開運堂に同じ名前のお饅頭があり、それを買って家族でお花見に行っていました。

つぐみの父は仕事人間でほとんど家にいませんでしたが、毎年恒例のお花見だけはいつも連れて行ってくれたのです。

「お父さんも桜が好きだったから。」

来年の桜が咲く頃は”家族みんなで笑顔で桜を見上げている”そんな未来があって欲しいとつぐみは願います。

週末、樹は開運堂のさくら萬寿を持って父の元を訪ねます。

相変わらず口を聞いてくれませんが、樹たちが帰ったあと、樹が手土産でもってきてくれたさくら萬寿を見て表情が変わります。

「覚えてるか?この桜塩漬け・・・。」

父は昔を懐かしみ母に話します。

毎年行っていたお花見に実は一度だけ行けなかった年がありました。

父の経営していた会社が潰れ、さらに過労で倒れて入院した時です。

その頃の父は、会社を失ったことがショックで、退院しても起き上がる気力すらありませんでした。

そうしているうちにいつの間にか桜も散ってしまっていました。

ある日、そんな父にまだ幼いつぐみは桜の塩漬けの入ったおかゆを用意します。

今年桜を見れなかった父のために、つぐみはさくら萬寿についていた自分の塩漬けを取っておいて、おかゆの上に添えたのです。

父は自分の仕事があるから家族が幸せでいられるんだと思っていました。

しかし家族の幸せがあるからこそ、自分は働いていられるんだと、その時気づいたのです。

つぐみが高校生になり、進路は東京で絵の勉強をしたいと言った時、母や兄は賛成しませんでした。

ですが父だけは賛成してくれました。

つぐみが東京で不自由なく暮らせるよう毎月仕送りも続けました。

つぐみが本命だったインテリアの会社に就職できた時は、本当に嬉しかったと父は話します。

「俺でも家族の幸せを守ることができたって思った。」

さくら萬寿をみてあの頃を思い出し温かい気持ちになるつぐみの父。

そんな父に母は後押しします。

「つぐみは昔から優しい子で、そして昔よりたくましくなったわ。良き父親として他に娘にしてあげられることあるんじゃないですか?」

翌週末、父は初めて樹の前で口を開きました。

「昨日はさくら萬寿をありがとう、嬉しかった。」

「この後私は散歩に行くんだ。君も付き合わんか?」

父に誘われ樹は外へ。

樹はこの機会を逃したらもう次はないかもしれないと思っていました。

(今!ここで!!)
(自分の気持ちを伝えるんだ!)

樹より先に父が喋り出します。

「鮎川さん、私は身をもって分かった。」

「自分の身体が自分の意思で動かせない。誰かに頼ることしか生活できない。それがどんなに苦しいことか。」

それをまだ20代の若さで背負った樹のことを、父は尊敬していました。

そしてこんな自分の元に何度も通ってくれる心優しく誠実な人だということも感じていました。

「お父さん!つぐみさんは僕にとってかけがえのない人です。」

「大切にします!2人で幸せを見つけていきます!!」

頭を下げる樹の前で、父はさらに話を続けます。

「今まで家族の幸せが私の生きがいだったんだ。でももう私は幸せを届けることができない。」

母は父の介助を続けているせいで腰を壊しだんだん歩くのも辛そうになってきていました。

これから先、父の身体はさらに衰え母の負担はもっと大きくなるでしょう。

体力、時間、精神力、金銭面、生活の全てが自分のために削られていくと思うと、父はいっそ治療は打ち切り早く消えてしまった方が良いのではとさえ考えていました。

だけど娘の幸せを見届けるまでは、死にきれないのです。

今はまだ樹は若く体力もあるけれど、いつかはきっと一般の人よりも早い段階で今の自分と近しい状況になるのではないか?と父は懸念していました。

だとするならそこに幸せがあるとは思えないのです。

「あなたの痛みが分かるからこそ私は賛成することができない。」

「お願いです。どうかもう二度と来ないで頂きたい。」

父にそこまで言われた樹は、さすがに心が折れてしまいます。

「俺には人を愛する権利も、愛される権利もないのかな。俺は・・・障害を負ったことで全ての権利をなくしたのかな・・・。」

絶望する樹をつぐみは「そんなわけない」と抱きしめます。

「だって私こんなにあなたを愛してる。鮎川も私を愛してくれてるんでしょう?」

樹から父の気持ちを聞いたつぐみは、父の気持ちに向き合うことを決意。

今まで理解してくれない父のことを、理解しようとしていなかったことに気づいたのです。

「今のままじゃ誰も幸せにならない。」

「二人のことをわかってもらうことが、父を救うことにもなると思うから・・・。」

41話へ続く

感想

せっかく結ばれた2人なのに、辛すぎる展開に涙が止まりませんでした。

そう簡単に父親が認めてくれるとは思っていませんでしたが、分かっててもやっぱり辛いなあ。

父の気持ちも分かりますが、私は樹とつぐみの気持ちに感情移入しちゃう。

本当につぐみの幸せを願うなら快く交際を許してあげて欲しい。

それに2人を見てたら「苦労=不幸」だとは私は思いません。

次回は、つぐみが父と向き合うターンです!

どうやってこの問題を2人が乗り切るのか、楽しみです。

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